【第4回/全7回】日本語ムズカシイいぃぃ~

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【第4回】「日本語」に苦しめられた試験勉強

書類が揃えば、次はいよいよ試験勉強の始まりです。社内では「もう合格した」なんて噂が勝手に一人歩きしていましたが、手元のテキストを開いた瞬間、私は自分の考えの甘さを痛感しました。

試験の内容は、〇×問題が35問、語群選択問題が5問の計40問。合格ラインは36点以上です。つまり「9割以上」正解しなければならないという、一問のミスが命取りになる極めてシビアな戦いです。プロとして11年ハンドルを握ってきた自負はありましたが、いざ机に向かうと、私は「法律特有の言い回し」に徹底的に苦しめられることになりました。

特に困ったのが、重箱の隅をつつくような「語尾のひっかけ問題」です。最後まで一字一句漏らさず読み込まないと、巧妙に仕組まれた罠にハマります。「この条件なら〇だけど、この条件が加わると×になる」といった、実務とはかけ離れた細かい規定が山ほどあり、何度も頭を抱えました。

さらにややこしいのが、似たような漢字の羅列です。「公共の福祉」や「旅客の利便」など、普段の仕事ではまず口にすることのない言葉が並びます。極めつけは、「受かる前から辞めた時の話(事業の休止や廃止)」といった規定。まだ合格すらしていないのに、なぜ辞める時の手続きを先に覚えるのか……と、テキストを前にしては何度も現実逃避しそうになりました。

最初から個人タクシー組合や県のタクシー協会が主催する勉強会には通っていましたが、正直なところ、本当に根を詰めだしたのは試験まで残り2週間を切ったあたりからです。それまではどこか他人事のような部分もありましたが、いざカレンダーの日付が迫ってくると、周囲からのプレッシャーはいよいよ最高潮に達しました。

「まりおんくんなら大丈夫だよ!」という同僚や事務員さんからの温かい励まし。これが、今の自分には「もし落ちたら、どんな顔をしてこの会社に戻ればいいんだ」という恐怖に近い重圧にしか聞こえません。

さらに私を追い詰めたのは、歩合給という現実的な恐怖でした。「今、違反や事故を起こしたら全部パーになる」というプレッシャーがある一方で、生活のためには売上もしっかり確保しなければなりません。事故に細心の注意を払い、神経をすり減らしてハンドルを握りつつ、休憩時間には頭がパンパンになるまで法律を詰め込む。このラスト2週間の緊張感は、これまでの11年間の乗務の中でも群を抜いていました。

「もう合格したことになっている社内の噂」と、一問も落とせない試験の重圧。そして「絶対に事故を起こせず、かつ稼がねばならない日々の乗務」。私は「公共の福祉」という文字を睨みつけながら、ただただ、この三重苦とも言えるプレッシャーから早く解放されたい一心で、必死にテキストをめくり続ける毎日を過ごしていました。


次回:第5回「運命の試験当日と、静かな合格発表」

あのプレッシャーの中、ついに試験会場へ。 「本当に受かるのか?」という不安を抱えたまま回答用紙を埋めていく…

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